田川産業のしっくいが選ばれる3つの理由「分析力・再現力・対応力」
文化財改修の基本的な考えは「復元」。どのような材料でどのように作られていたのかを徹底的に調査・分析し、それを元に材料も復元します。
ただ、材料を正確に復元したものの、現場の環境や下地の材質により数年経って再度改修が必要になる材料だとしたら、その復元は正しいと言えるのかという疑問が生じます。後世に残していくためには、復元する材料が当時のそれそのものではない場合があるのも事実です。
その為、例えば海の近くであれば海水の塩分を多く含んでいるなどの、現場環境や下地の材質まで調査・分析を行うことで、状況に応じた材料を復元することもございます。
既製品を使用するケースもありますが、基本は現地調査を行い、持ち帰った現物の分析を行った上で、復元用の材料をご準備させて頂きます。
この徹底した分析力が他にはない田川産業の強みだと考えております。
あらゆるものに「質」の良し悪しがありますが、それは「しっくい」も同じ。伝統技法である「土中窯による塩焼き製法」のしっくいは、工業用石灰よりも白度が非常に高く、ひび割れが起きにくいのが特徴です。その上、石灰の焼け具合を熟練の職人が全て手選別を行い、合格品のみをしっくい用の石灰として使用する等、しっくい用石灰製造におけるこだわりと品質の高さに自信があります。
また、しっくいには欠かせない「糊(のり)材」、特に「炊き糊」は、文化財復元には欠かす事のできない材料の1つです。かつては現場で炊いて作られていた糊材ですが、火気の取り扱いやニオイの問題で今ではそれが出来なくなっています。当社の工場で作る炊き糊は、かつての現場製造をそのまま再現している為、その品質及び製造方法を文化庁管轄である「文化財建造物保存技術協会」にも評価して頂いています。
仕上げ材のしっくいのみならず、下地段階における特殊材料も取り扱いがございます。見た目の再現力に加え、目に見えない箇所まで再現することで耐久性が向上し、後世に残していく上でとても重要だと当社では考えます。特に、ヒビ割れ防止用に下地に伏せ込むネットは、現在化学繊維のものがほとんどですが、文化財を復元する上で、化学繊維ネットが使用されているケースはほぼありません。当社仕様の「麻ネット」は乾燥収縮による適度な張りが出るため、文化財復元において使用する下地との相性がよく、より耐久性を持った壁を復元いたします。
また、黒しっくいや、ねずみしっくいのような「色しっくい」の材料もご対応可能です。分析・下地・仕上げまでワンストップで「復元」をサポートできる「対応力」も当社の強みです。
一般的なリフォームとは違う、田川産業のしっくい「復元」
田川産業のしっくいをご採用頂いたお客様からお声を頂きました。
ニューヨークの432Park Avenueの物件で一緒にお仕事させて頂いたのは、日本でも中々類を見ない左官の腕が随所に光る物件でしたが、それをニューヨークの一等地で行うという事の難しさを、田川産業さんが今まで培ってきた経験とノウハウ、そしてしっくいに関する知識の深さが可能にした案件だったと感じています。
日本とは違う気候や環境での作業は、材料の塗り厚、乾き具合など、日本での「当たり前」が通じない部分もありましたが、それをニューヨークでやり遂げることが出来たのは、田川産業さんの知識の深さと適応性(応用力)によるものだと思います。
イレギュラーにも対応できるそれが、田川産業さんの突出した強みであり、ひいては国内の文化財修復に多く携わっている理由でもあると思っています。
田川石炭記念公園(福岡県田川市)にある筑豊のシンボル「二本煙突(高さ45.5m)」。平成19年10月には国登録有形文化財となり、経済産業省による近代化遺産に認定されたこの煙突の老朽化が進み、崩壊に危機が迫っていた為、市は昭和54年から九州大学工学部の協力を受け、平成24年まで大規模な修復補強工事を実施しました。
今回の修復には、煙突の目地材の復元を田川産業(株)に依頼し、現場からサンプルを持ち帰り、調査研究を実施して頂き、石灰とモルタルセメントの配合の分析結果を元に復元材の生産がなされました。完全に復元された煙突の仕上がりを見て、モノづくりにかける田川産業(株)の情勢と努力を改めて感じました。
その後も常に石灰の利活用の研究開発に取り組む姿勢に敬意を表するとともに、益々の御活躍と御発展を心から御祈念申し上げます。
旧グラバー住宅をはじめとする重要文化財建造物や国指定史跡出島内の復元など、文化財建造物の復元でご一緒させて頂き、数多くの実績で培われたノウハウを持つ田川産業さんには安心してお任せできる信頼があります。
その理由として、地元田川産石灰石を使用し、在来の土中窯による焼成を守りながら、現地の確認・調査・分析から製造までのワンストップソリューションで行える点、在来の材料・調合を踏襲しながら、品質向上された製品はもとより、「文化財保存技術協会」指定の「貝灰」や「炊き糊」など本物の修復への拘りを持ち、設計監理者の要望に沿った配合にも対応できる体制を整えている点がございます。
また、実際に施工を行う左官とのコミュニケーションを図り、これら技術情報をフィードバックし、更なる品質向上に努めているその姿勢も、多くの実績と信頼に繋がっていると思っています。
約20年前、国指定重要文化財ド・ロ神父記念館の改修工事に当たって、田川産業さんに改修用の貝灰漆喰を相談したところ真摯に対応して頂いたことによって、行政や文建協さんからも高評価を頂くことができました。
以来、長崎出島、黒島教会、グラバー園等々の長崎県を中心に多くの重要文化財や世界遺産である教会群の改修復元工事に携わらせて頂き、使用した漆喰はすべて田川産業さんの貝灰漆喰でございます。
また、私は左官職人として田川産業さんに対し、貝灰漆喰の作業性に関しても多くの無理難題をつけることがありましたが、その度に私の意見を聞き、文化財の復元という大前提に立って作業性の改良を重ね、おかげで非常に使い勝手のいい漆喰ができております。
これからも田川産業さんと協力し、先人たちの残した文化財を守り、後世に残していくことは私の使命だと思っています。
貫の上下の割れ止めとして、以前は蚊帳を下地壁に塗り込んでいましたが、最近の蚊帳は化学繊維のものがほとんどで、壁の割れ止めとしては耐久性が足りず、適しませんでした。
そこで田川産業さんに、本麻寒冷紗(本麻ネット)の開発を相談しました。田川産業さんと共同で長い年月を費やし、本麻原料種類の選定、織り方の探求、強度・耐久性の試験、施工方法の確立等を経て、国内唯一の「本麻ネット」が誕生しました。
本麻寒冷紗の特徴として、塗り込み後は乾燥により幾分収縮し、張りを持つため、ほどよい強度でなじみ、土壁等のひび割れを軽減します。編み幅も2種類あり、用途によって使い分け出来るので汎用性も高いと思います。
田川産業さんのこの本麻寒冷紗は全国の文化財改修に寄与することができる逸品になると確信していますし、こちらの依頼にしっかり応えて頂けるその対応力にも感謝しています。
浜田醤油の蔵および白壁は、国の登録有形文化財の指定を受けております。2016年熊本地震により、白壁が崩れるなど大きな震災に見舞われました。社業の復興には、しっくい壁の修復が不可欠でしたが、いろいろな問題が生じ、思うように工事が進まない状況が続いておりました。
そんな中、浜田蔵リノベーションの監修を行っていた「隈研吾建築事務所」様のご紹介で田川産業様とご縁を頂きました。生じた問題に対する原因追求は、途方もない調査・分析を要されたと思いますが、おかげさまで、綺麗なしっくいの白壁が完成し再び浜田の醤油蔵に命が吹き込まれました。
今は、国内外からのお客様も迎えることができ、本当にうれしく思います。心から感謝致します。
全国各地、多くの文化財や歴史的建造物で田川産業のしっくいをご採用頂いています。